甲状腺疾患について

甲状腺とは、鎖骨の少し上の頸部に存在し、甲状腺ホルモンを再生する内分泌器官で、甲状腺ホルモンは体の代謝のバランスを整える大切なホルモンです。
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を盛んにする働きがあるため、細胞の活動が活発になり、全身の活力が上がります。

甲状腺疾患は女性に多い

甲状腺疾患は女性に多く見られます。ある調査では、健康と思われる40歳以上の成人女性を対象とした健診において、20%程度の高い頻度で何らかの甲状腺疾患が見つかったという報告があります。もちろん男性も甲状腺の病気になり得るのですが、圧倒的に女性のほうが多く、女性の病気と言っても過言ではないでしょう。
甲状腺疾患の中で最も多いのが橋本病、次いでバセドウ病です。
いずれもやはり女性に多く、約90%が女性です。

以下に、橋本病とバセドウ病について説明し、甲状腺腫瘍についても触れておきましょう。

橋本病

橋本病は圧倒的に女性に多く見られ、甲状腺機能低下症の代表的な病気です。
甲状腺ホルモンの量が不足して、新陳代謝が低下し、全身が老けていくような症状がみられます。無気力で頭の働きが鈍くなり、忘れっぽく、ひどくなると認知症の原因の1つにもなります。寒がりで、皮膚も乾燥してカサカサになったり、体全体がむくみ、髪も抜け、眠気があり、ボーッとして活動的でなくなります。
甲状腺そのものの症状は、甲状腺の腫れです。ちょうど頸の正面が腫れていて、硬く、表面がゴツゴツした感じになっています。

橋本病では、以下のような症状が現れます。
  • 寒がり、疲れやすい、動作が鈍い
  • 甲状腺腫大、のどの違和感、ボーッとしたような顔
  • 息切れ、むくみ、心肥大
  • 食欲低下、舌が肥大、便秘
  • 脱力感、筋力低下、肩こり、筋肉の疲れ
  • コレステロール上昇、肝障害、貧血
  • 月経不順、月経過多

など

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気、すなわち甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気です。バセドウ病では特殊な抗体が作られ、これが甲状腺を刺激して、過剰に甲状腺ホルモンを分泌させてしまいます。
他の甲状腺疾患と同様に女性に多い病気ですが、その比率は、男性1人に対して女性4人ほどです。

バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰に作られるため新陳代謝が盛んになり、さまざまな症状を引き起こします。

バセドウ病では、以下のような症状が現れます。
  • 暑がり、疲れやすい、だるい
  • 目つきがきつい、眼球突出、複視、甲状腺腫大
  • イライラ感、落ち着かない、集中力低下、不眠・甲状腺が腫れる
  • 発汗、脱毛、かゆみ
  • コレステロール低下、血糖上昇、血圧上昇、肝障害
  • 脱力感、筋力低下、骨粗しょう症、手足のふるえ
  • 動悸、頻脈、心房細動、心不全、むくみ、息切れ

など

検査

バセドウ病や橋本病の検査は、「血液検査(甲状腺ホルモンの量や特殊な抗体の存在を調べる)」と 「超音波検査(甲状腺の形や大きさなどを調べる)」 の二つが中心になります。
疑われる甲状腺の病気に応じて、尿検査や心電図検査、甲状腺ヨード摂取率検査、心電図検査、頸部X線検査、細胞診検査など、いくつかの検査を追加します。


治療

バセドウ病、あるいは橋本病の治療は、薬物療法が中心になります。定期的に行われる血液検査をもとに、バセドウ病の場合は甲状腺ホルモンを抑える薬を、橋本病の場合は甲状腺ホルモンを補充する薬を服用し、血液中の甲状腺ホルモンの量をコントロールしていきます。
こうした治療の過程で甲状腺の腫れは治まり、耐えられないような自覚症状も緩和していきます。ただし、薬物療法による治療は長期にわたることがあります。途中で治療をあきらめたり、自己判断で薬の服用を止めたりしないように、根気よく治療を続ける必要があります。


甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍は大きくなると、のどぼとけの下あたりにしこりとして認められるようになります。
診断のためには、血液検査や超音波検査、CTなどの画像検査、さらに穿刺吸引細胞診などが行われます。その結果をもとに、手術の必要性やその方法を検討します。
甲状腺腫瘍の多くは良性腫瘍なのですが、悪性腫瘍もみられ、その種類にはさまざまなものがあります。
最も多いのは乳頭がんで、頸のリンパ節に転移したり、気管や食道などに浸潤したりすることもありますが、進行は遅く、10年後の生存率が90%と非常におとなしいがんです。
次に多いのが濾胞(ろほう)がんで、良性腫瘍との鑑別が難しく、手術後にはじめてがんと判明することもあります。肺や骨などに転移しやすいのも特徴です。
未分化がんというタイプは稀ではありながらも、非常に進行が早く、治りにくいがんです。

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せきや内科クリニック

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